2024 05,01 05:59 |
|
× [PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。 |
|
2009 08,27 19:13 |
|
初京極夏彦。
正確には、前に短編集をちょっと読んだことがあったんだけど、 その時はいまいち面白いと思えなくて途中までで挫折。 やはりこの人は長編の人なんだろうなぁ。 とにかく巧い小説。もう唖然とするしかない感じ。 古文じみた文章はそりゃあ読みにくいんだけど、 とてもリズムが良くて言葉選びも巧みなせいか、 少し読むと慣れてきてしまうから不思議。 歌舞伎とかの感覚に近いのかもしれない。 むしろ日本語好きの僕としては、 今使われている言葉の語源のようなものがたびたび出てきて、 感心しながら読み進める感じだった。 そして、とにかくも構成が巧い。 絶対、前から思いつくままに書いたりしないで、 ものすごく綿密なプロットを立てて書いているんだろうなぁ。 各章ごとに人の名前がつけられていて、その人が視点保持者となって進む。 いわゆる「キャラクター寄り三人称」というやつで、 視点保持者に限っては心情も描写する、一人称に近い形だから、 いわゆる「それぞれの思惑が複雑に絡み合って云々」というのが、 まさに目の前で繰り広げられる。 そのおかげで探偵もいないのに読者には全てがきちんと明かされるという、 神業的な構成を、この作品は持っているのだ。 僕は本を読むときに、登場人物に感情移入したい、という気持ちがとても強い。 だから自分とあまりに違う環境に生きている人物が主人公の作品はちょっと苦手だったりする。 だけど、この作品は僕に新しい読み方を示してくれたように思う。 舞台が江戸時代だから、いわゆる善悪の考え方も今とはまったく違うから、 登場人物に感情移入するのがちょっと難しい。 家を断絶させないために見たこともない人物と結婚するとか、 まぁ、僕らにとっては意味が分からないもんだ。 だから作品では「この時代はそういうもんだった」 みたいな説明をして納得させなくちゃならないんだけど、 視点保持者がどんどんと入れ替わる構成のおかげか、 あるいは、作品全体をしっかりと捕まえている本当の主人公が、 物語の当事者ではない、いわば狂言回し的な人物の又市であったせいか、 「この人はそういうふうに思ってしまう人なんだな」 とそれぞれのキャラを冷静に見ることができ、 感情移入を必要とせずとも十二分に面白いのだ。 そういう読み方のせいか、読み終わったあとはひどく冷静で、興奮はない。 けれど、とにかく巧い、すごい、という思考が頭の中をぐるぐると巡っていて、 なんだか悔しいが、それがとても快感なのだ。 まんまとしてやられた、という感じ。 で、読み終わったあとに作者のプロフィールを見て余計に悔しくなった(笑)。 広告代理店やらデザイン会社でそれなりに認められながら働いていて、 仕事の合間に初めて書いた小説を、なんの賞でもないのに出版社に持ち込んだら、 すぐに出版されて大人気になった、ってどんだけ天才なんだ(笑)。 悔しいから、「好きな作家は京極夏彦です」なんて、ぜーったい言わないんだから! さて、次はどれ読もうかな……。 PR |
|
コメント |
コメント投稿 |
|
trackback |
トラックバックURL |
忍者ブログ [PR] |