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2008 05,23 07:29 |
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ジャンル:インディーズ音楽
今更だけど、レビューを書いてみようと思う。 何度聴いても新しい感動がある、僕が持っているアルバムの中で間違いなく1,2を争う、大切な大切な一枚。 アーティストはLOST IN TIME。 このアルバムの頃はベースヴォーカル、ギター、ドラムのスリーピースバンド。 LOST IN TIMEを語るとき、まず取り沙汰されるのはヴォーカル海北大輔の類い希なるソングライティング、特に剥き出しの言葉を連ねた、その歌詞だ。 他のアルバムでは、絶望や悔しさ、寂しさを叫ぶ、ネガティヴともいえる楽曲の多いLOSTだが、このアルバムは全体に肯定と優しさで満ちており、彼らの作品の中では異色を放っている。 それに併せて普段は血を吐くような、喉もちぎれんばかりといった風が目立つ歌い方も、このアルバムではむしろ「音一つ一つを丁寧に」紡いでいる。 かといって、このアルバムが他のアルバムに比べてエネルギーに欠ける、耳障りのいい売れ筋に走っているというわけでは決してない。 彼らの肯定は、前二作で絶望を知り、自らの矮小さ、孤独の恐ろしさを痛いほど知った彼らだからこそ作れる、「到達点」としての肯定だ。 そこには弱さや醜さを否定するのではなく、それを抱えたまま、痛みを伴った肯定がある。 そうでなければ決して「頑張ってるふりなんて しなくてもいいんだよ」などという歌詞は書けないだろう。 しかしながらこのアルバムの魅力は、海北大輔の歌だけにあるのではない。 圧倒的な、楽器の音色。 歌、ギター、ベース、ドラムの4つの音が創り出す完璧な世界。 これほどまでに完成度の高い音楽世界は類を見ない。 普通、スリーピースバンドと言えば、ドラムとベースがリズムを刻み、ギターがメロディを助ける伴奏となり、歌がメロディラインを刻む、といったイメージではないだろうか。 時折、間奏や前奏で、ギターソロが目立つ他は基本的に歌が刻むメロディーをいかに見せるか、が重要なはずだ。 ところが、LOSTはちょっと違う(と僕は思う)。 大岡源一郎のドラムがリズムの要だ。 強弱も緩急も、音色の違いも完璧に使いこなす彼のドラムは、まさしく感情あるドラムだ。 ベースの共演に頼らずとも、ドラム一本で喜びも悲しみも、強さも弱さも、すべてのリズムを鮮やかに表現する。 では海北大輔の奏でるベースは何をするのかと言えば、メロディを奏でるのである。「リズムを刻む」どころか、その演奏はどこまでもメロディアスだ。 「目立たずにメロディを下から支える」というより、ばっちり前衛で目立ってしまう。 正直に言って、歌の伴奏はドラムとベースだけで十分にこなしている。 となれば、残る榎本聖貴のギターの役目は? 言ってみれば「やんちゃな遊撃兵」だと、僕は思っている。 彼の奔放なギターは、歌の伴奏をするつもりなど毛頭ない。 右かと思えば左、上かと思えば下、という具合に、メロディの隙間を縦横無尽に駆け抜けては、予想もしなかったフレーズで僕らを翻弄する。 曲の裏方としての地位などには決して満足せず、時には飛び込むように颯爽と現れ、主役の座をほしいままにする。 それでいて決して曲の均衡を崩すことはなく、ヴォーカルを邪魔することもないのだから、見事という他にない。 このアルバムを聴き終えたとき、あなたはギターの持つ信じられないほど多彩な表現力を目の当たりにして呆然とするだろう。 ギター榎本聖貴のLOST IN TIMEからの脱退により、この組み合わせの作品がもはや見られないのは残念だが、一度リリースされた以上、このアルバムはいつまでも完成された作品として残り続ける。 スリーピースという最小単位が創造する音楽世界の極限が、ここにある。 PR |
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